カルラ・リッチ
2010年4月 東京にて
日本で私が出会ったのは、暗くて形のはっきりしない影のような存在です。この影は「引きこもり」の人が闇の中から社会に訴えている現実を反映しています。
「引きこもり」の人は不安な世界から自分自身を守るために自分の部屋に引きこもって、無力的で、孤立した人になっています。
「引きこもり」になることは、社会の中で彼らが自由に選択したことではないと思います。反対に、機会があれば、彼らは社会生活に参加したいと思っているのではないかと私は考えます。
「引きこもり」になってしまうのは、自分の選択と言うよりも、障害の多い道のような社会の中で、疲れた自分自身や、混乱した心を癒す場所を求める結果だと思います。しかし、残念ながら、その逃避は終わりのない状態になってしまいます。
「引きこもり」の現象を理解するために、日本の社会の特殊性や日本人の価値観、文化、経済、その他あらゆる角度から多面的に研究してゆくと、みえてきたのが日本の社会は「引きこもり」の人を生むように肥沃になった土地のような社会構造になっていることでした。
しかも、この現実世界は消費文化という共通項で全世界に広がっていることも見えてきます。
文化的、社会的、経済的な理由で、「引きこもり」の現象が日本で始まったにもかかわらず、現在、これは中国でも、韓国でも、イタリアでも存在しています。この日本以外への転移を見れば、現代社会の矛盾は世界的に社会そのものが疲弊していることを強く感じます。
「引きこもり」の問題に立ち向かうのは非常に複雑なことです。なぜならば「引きこもり」のために薬がありません、しかも通常のカウンセラーでは対応が難しいと思います。
「引きこもり」の原因は社会全体に責任があるにもかかわらず、「引きこもり」の人のために社会は何も出来ません、だから「引きこもり」の人は自分の人生について考えたり、自分の人生を大きく変化させるために内省が必要だと思います。
そうするためにはまず家族が考え方を変化させることが必要だと思います。そのような変更は難しくて苦しいことですが達成された場合には、「引きこもり」の人だけではなく家族全員の喜びとなるでしょう。その変更のために、子供への両親の努力や共感が必要です、本当のキーワードは「勇気」だと思います。勇気があれば、両親は子供の人生だけではなく自分の人生も変えることができます。
私は専門家としての研究過程で「引きこもり」の家族の以下の特徴を発見しました。
人生の本当の意味への関心をもつ時間さえない両親の生き方は、子供に影響を与えます、病気の感染のように息子は無意識的に両親の感情の状態を真似ていると私は思います。「引きこもり」の人の心の中で脈打っている無力感は、虚しくて意味のない社会生活に自分も参加しなければならないという思いから生まれたと私は考えます。彼らは両親の生活や考え方から人生の虚しさを感じるのだと思います。
「引きこもり」の人が部屋を出る可能性は両親の心の変化にかかっていると私は信じます。両親のそのような「精神的な革命」のために具体的な行為が必要だと思います。最初のステップは両親が心をこめて内面的に変化することです。次のステップはカウンセラーを求めることです。この専門家は「引きこもり」の人のカウンセラーだけではなく、両親が何をすれば良いか有効な方法を教える能力のあるカウンセラーだと思います。
私は、日本の社会構造や文化がそのような精神的な変化を難しくしている事を知っています。しかし現在の閉塞感を打開するために私たち一人一人が一歩を踏み出すことが必要だと思います。
「引きこもり」は本人とって非常に苦しい状態ですが勇気をもって変化に挑戦すれば、あなたが悩んでいた事すべてが貴重な経験となりすばらしい未来が開けると思います。
悩みの状況から行動へ。
失う人生から満ち足りてゆく人生へ。
「引きこもり」が生まれた日本という国で、「引きこもり」という孤独の経験を通じて、あなた方の体験すべてが世界中で今だ形となって現れていない多くの「悩める若者たち」に再生と建設の道を教え事が出来るのが私の希望です。
そうすれば、日本は経済の先進国としてだけでなく現代社会の精神革命の発起国になるのではないかと思います。
泥沼に咲くハスの花のように濁りきった現代社会の中にあっても、その気持ちさえ変えれば貴方が美しく花開く未来があるのです。たった一度の人生です、自分の可能性を信じてください。そして御両親も子供さんの人生を無にしないためにも、出来る事から始めようではありませんか!
難しい事ではありません、
希望を持つことです。
あなた方の経験した事、これから実践する事すべてが「自分自身のための人類学」として結実し現代社会の光となることを願います。
専門家として私も全力を尽くします。
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